自分が自分であることに疑問を抱くということはとても辛いことだと思う。
その時の私は表面的には気づいていなかったのだろう。
姉に言われた一言が今でも尾を引いているということはそういうことなのだろう。
それでも、私はその疑問が私を苦しめているとは思いもしなかった。
(あ、私が太っているから、私のことが恥ずかしいんだ)
と、ただ単純に理解したつもりになっていた。
であれば、痩せれば姉は認めてくれるであろう、痩せれば、世間も私も姉の妹だろうと認めてくれるであろう、と
ただただ単純に考えた。
太っているということは、醜いということなんだ、と。
太っているということは、よくないことなんだと。
太ってさえいなければ、みんな私を認めてくれるんだろうと私は考えたのだと思う。
その日から、ダイエットを始めた。
小学5年生でダイエットなんて、今の若い子たちならあるかもしれないけれど、
当時、小学5年生で今でいうダイエットをしている人は1人たりとも同級生にはいなかった。
そして、ダイエットという言葉さえも知らずに、私は食べるのをやめた。
お昼は、牛乳(これは痩せると思っていた)を流し込んで、ご飯を50回噛み締め、
それで終わらせるようにした。
夜は、食べていたけれど、少し。
そして、飢餓感に耐えきれない時は、ひたすら氷を噛み締めていた。
運動は、激しい坂をひたすら走り、50分ほどランニングをしていた。
みるみるうちに痩せていった。
そして、痩せていってからは、不思議と姉が私を妹だと友達に紹介してくれるようになった。
私はそれが嬉しかった。
ああ、やっぱり痩せるといいことがあるんだ、そう思った。
そこまではよかった。
その変な勘違いがここまで私を苦しめることになろうとはその時の私には知る由もなかったのだから。