満月を仰ぎ見ながら寝る夜
父にも仏眼と十字神秘が両手にあったことを初めて知った。
3人の子供を田舎の自営業ながら大学まで行かせたのだから、それはそうかもしれない。
収入がままならくて、そんな中大学受験の勉強を夜中までしている私を見て、鬱にまでなってしまった父。
今は元気に、持病と戦いながら生きていてくれている。
神様に感謝。
ご先祖様に感謝。
私は幼い頃から祈っていた。
物心ついた頃には祈っていた。
どうか父と母を連れていかないでくださいと。
父と母を連れて行く前に私の命を使ってくださいと。
それを思い出した夜。
父は私と同じ能力を持っていた。
目の前の人間の善悪がすぐにわかるという。
私の欠点はわかっていても期待をしてしまうところだということを理解した。
人を傷つける人をも信じようとしてしまう。
それは私の欠点である。
風が漣の音を連れて来る。
まるで海にいるよう。
私は良き両親の元に生まれた。
私は恵まれている。
だからとて、そうじゃなかった人より責を受けるべきことはなにもない。
だって、それはあなたが選んで生まれた人生だから。
気にすることはない。
私は恵まれた両親の元に恵まれない精神で生まれただけなのだから。
なにを言われる筋合いもない。