30日目
El Ganso to
痒い。ただひたすらに痒い。
全身が痒い。
今日全身をくまなくチェックしたところ、少なくとも60箇所は例の南京虫の被害に遭っていることが確認された。
ほとんど死にたい気分である。
昨日の素晴らしく親切でキュートな韓国人女大生から譲り受けた抗ヒスタミン剤と、炎症を抑える塗り薬のおかげでグッスリ眠れた。
のは確かなんだけれども、その後が酷かった。
朝は涼しいからまだいい方であった。
が、日中太陽が空高く燦々と輝き、私の体を熱すると、ひじょーに痒い6y7。
歩きながら、すべての意識が体全体の痒みにフォーカスしてくる。
痒いって耐えられない。
痛みより耐えられない。
そういう事実に気づいたのであった。
汗と日焼け止めでべっちょべちょになりながらも、私の全身はひたすらに痒いと私に訴え続けていた。
最悪である。
すべての南京虫を駆逐したい衝動にかられること、、、何十回か。
もはや身体中を掻きむしりながら歩いていた。
1個前のアルベルゲのオーナーが何故か私とFACEBOOKで友達になりたがって、友達になったのだけれど、
私がやけに朝早く出発したのを訝しく思ったらしく、理由を聞いてきたので率直話した。
そしたら、血相を変えて、
「うちのアルベルゲには南京虫など居ない!」
と言い張られた。
でも、私だって別にあなたのアルベルゲに南京虫が居たとは言っていないのである。
ただ、噛まれて痒かったから寝られなかった、寝られなかったから朝早く出発せざるをえなかった。
それだけのことであったのに、我々のメッセンジャーはかなり炎上していた。
どこで噛まれた、だの、噛まれたところを写真を見せろ、だの、いつ噛まれたのか、だの散々メッセンジャー上で事情聴取を受けることになった。
なにが、私日本人大好きです、だよ。
ソッコー容疑者扱いである。
私は、といえば、そのアルベルゲに宿泊する前日はレオンでホテルに滞在していたし、その前は2日間パンプローナで友人の素晴らしく綺麗で広いマンションに宿泊していたので、一体どこで南京虫をゲットしたのか見当もつかないのであった。
それを告げてもなお、うちのアルベルゲに南京虫はいねえ!の一点張り。
いや、もうわかったから・・・という感じでかなり辟易した。
どこで南京虫をゲットしてしまったかなんて分かりようもないし、少なくとも私は日本から南京虫を連れてきたわけではないのだ。
どこかの「アルベルゲ」でキャッチしてしまったとしか考えられない。
まあ、どこでも良いんだよ。
とにかく痒いんだよ。
もう、本当にそれだけ。
別に誰を非難する気もないし、非難される気もない。
ひたすらに痒い、それだけである。
そして、次の犠牲者を出さないために、バックパックをすべて空にして直射日光の元で長時間殺菌消毒をしたし、すべての衣類を1つ残らず洗濯する羽目になった。
それでも、私の噛まれ跡(かなり赤く腫れている。しかも広範囲)に顔をしかめるアルベルゲオーナーが多発し、正直辟易している。
彼らもビジネスだから仕方がないのはよくわかる。
でも、すべてのアルベルゲが巡礼者としてのもはや通過儀礼みたいになっている南京虫被害を受けたペリグリノを拒否したら、一体誰の為のアルベルゲなのかよく分からなくなる。
それって、ただただ利益を出したいだけじゃない?
だったらアルベルゲなんてやめちまえよと思うんだよね。
あ、これ非難しちゃってる感じ?笑
これは結構極論だけれど、他にも南京虫被害にあったペリグリノが居て、みんな宿泊を拒否されているそうだ。
公営のアルベルゲに行けばと言われても、すべての町に公営があるわけでもない。
じゃあ一体どうしたら良いんだよ!
と半ばかなり腹ただしく思う私であった。
なんだかどこに行っても、伝染病の保持者みたいな扱いを受けているうちに、自分がかなり薄汚れた存在のような気になってくるから非常に辛い。
だんだんと私は肌をすべて隠すようになった。
みんなに噛まれたと気づかれないように。
巡礼に来てるのに、それってあり?っていう感じではあるが。
もう痒くて痒くてすべての思考がストップする。
歩くとかどーでもよくねーって感じにさえなる、程に痒いのだ。
しかも、多分出会った南京虫被害者の中で私がベストオブ被害者であろうことは明確であると言えるほどに、ものすごい箇所を噛まれまくっている。
いったい、何匹居ればここまで嚙めるんだ?
文字どおりわたしのつま先から首根っこまで全て満遍なく噛まれている。
すべてが赤く腫れ上がり、可哀想な感じになっている。
これって一体いつまで続くんだろうか。
そして、跡はやはり残るのだろうか?
綺麗な肌だったのに、ものすごく残念な感じの肌に仕上がっている。
もはや皮膚病みたいな感じである。
痛々しいことこの上なし、である。
今日は、途中の街で例の日本人女性と出会い、一緒に歩くことになった。
彼女とは、数日前に道で出会った。
その時は触りしか話さなかったが、いろいろ話しているうちに、彼女とかなり共通点があることが分かった。
好きな小説も一緒。行きたい場所も一緒。見ていたアニメも一緒。
英語力もだいたい同じくらい。
彼女もわたしと同じくFF(FINAL FANTASY)派であった。
これだけ共通点がある人とスペインのカミーノで出会えるとはかなり珍しい。
そんなこんなでかなり親近感を覚え、一気に距離が縮まったのであった。
気の合う人と歩くというのはエネルギーの交換ができる気がする。
私たちは、思ったよりも長い距離を歩くことが出来た。
そして、日本大好きだと言い張るブラジル人に目的地の街で先に到着した私は捕まって、いろいろ話しながら彼女を待っていた。
そのブラジル人は、一家でオステルを経営しているらしく、結局断れない日本人代表の私は、彼女を誘い、彼のオステルに滞在することに。
一泊40ユーロ。
にしては、素晴らしいキッチンと素晴らしいベッドを兼ね備えた心地良いオステルであった。
オステルに到着してから、私たちはものすごく綺麗だった川へと泳ごっか!ということで出かけることにした。
実際に川に足をつけてみると、恐ろしい程に冷たくて、死ぬかと思った。
私は足先をつけただけで、泳ぐのを拒否。笑
彼女は勇敢にも川に飛び込んでいった。しかも2回も。笑
そして、ガタガタ震えながら食材を買い、2人で料理をすることにした。
キッチンはそれほどに素晴らしかった。
私はサラダと米を(いつもそれしか作らない。笑)、彼女はズッキーニとトマトの炒め物を作ってくれた。
ニンニクが効いていて非常に美味しかった。
そして、ビールで乾杯し、久しぶりのヘルシーな料理を2人で堪能したのであった。
なかなかどうして素晴らしい1日であった。
2人の出会いに、乾杯!