実は、私にはほとんど歯がない。
8割方、歯を失っているか、被せ物である。
もともと、小さい頃から歯が弱く、磨いても磨いても虫歯に蝕まれていた。(親父ギャグね)
にもかかわらず、歯医者が大嫌いな私に母には常々、
「歯だけは大事にしなさいよ。歯は治らないんだから。」
と口酸っぱく言っていたのを今でも思い出す。
そんなこと知ったことか、と当時の私は思っていた。
そんな私に言ってやりたい。
「歯は二度と戻らねえんだからな!」
歯医者に行っても、田舎だったからかなんだか知らないが、虫歯は続出。
そのまま、過食嘔吐の暗黒時代に突入した。2004年から2016年の現在まで、暗黒時代は尚も継続中である。
歯がもともと弱い、その上、歯ぎしりは毎晩、その上に過食嘔吐だ。
歯が無事に残ってる方が奇跡というものだろう。
歯医者に行けば、「うわっ…」っていう反応をされ、ますます行きたくなくなる。大学時代にはほとんど銀歯か、抜歯でブリッジ銀歯だった。
ただ、見た目は良かったらしく、
「性行為1回につき、インプラント1本」というヤバいオファーをしてくるヘンタイ物好き歯医者もいた。
それを受けたかどうかは私のインプラントの数で分かるだろう…
って0本だけどね。
ある歯医者に10分遅刻したが為に、「お前の歯は見ねえ!帰れ!」という診療拒否をされた事もある。
(まあ私が悪いんだけど)
そんなこんなで、ここに歯医者大嫌い人間が生産された訳である。
そして、とうとう、
「あと1本抜歯で入れ歯」
という崖っぷちまで立たされたのが去年。
そんな中、前歯の被せ物を噛んで砕くというTHE ファック!な事件が勃発。
たまたま、オフィスと家から近かったというだけで選んだ歯医者へ行った。
そこの歯医者は、最近出来たばかりだった。ただ、銀座で開いている歯医者の別店舗ではあったが。
とても綺麗な内装で、内装の原価から施工費、家賃までだいたい分かってしまう私は身構えた。
(これを回収するために営業されちゃならん…!)と。
そこは、ほとんど自費治療の歯医者だったのだ。行くまで全く気づかなかったアホは、ノコノコとネギ背負って診療室まで入って行ったのだった。
私の銀歯だらけのヤバい姿を見て、その若造にしか見えない兄ちゃん(後に分かったのだが、まさかの院長だった)は、
「おっしゃー!やる気出るなーこれ!」
ってテンションアゲアゲで叫んだのだった。
...は???
である。
いつもビビるのは歯医者であって、決して私ではなかったのに、私は初めてビビったのだった。
要は、やりがい(治しがい)のある患者さん来たー!ひゃっほーい!ということらしい。
登る山は高ければ高いほどやる気が出るタイプなのね。そう思った。
そして、夫にそういう所が似ているなーって思った。
夫は、まぁ夫としてはさて置き、仕事人としては申し分ない男である。
そうなると、この兄ちゃんも腕はきっと確かだろう、、、という物凄い瞬発的な直感で私は自費治療を決意した。
しめて、250万である。
すべてセラミック、インプラント2本、その他諸々諸経費込み。
そして、1.5年の辛く長い、時にめちゃめちゃ楽しい治療が始まった。